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東京地方裁判所 昭和51年(特わ)203号 判決 1976年8月27日

本籍

栃木県河内郡上三川町大字上三川一六六〇番地

住居

東京都墨田区業平二丁目一〇番九号

会社役員

青柳良太郎

大正六年三月二二日生

右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は検察官清水勇男、弁護人葛西宏安(主任)、同小野寺富男出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役六月および罰金八〇〇万円に処する。

右罰金を完納できないときは金一〇万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

この裁判の確定した日から二年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、東京都墨田区業平二丁目一〇番九号において、玩具卸売業を営んでいるものであるが、自己の所得税を免れようと企て、関係帳簿等を作成せず、あるいは売上の一部を除外して簿外の仮名預金を設定するなどの方法により所得を秘匿したうえ、

第一  昭和四七年分の実際所得金額が二、八七四万五、五一五円あつたのにかかわらず、昭和四八年三月二日、同区業平一丁目七番二号所在の所轄本所税務署において、同税務署長に対し、総所得金額が二八二万〇、一四三円でこれに対する所得税額が二五万七、五〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により昭和四七年分の正規の所得税額一、三三九万二、六〇〇円と右申告税額との差額一、三一三万五、一〇〇円を免れ(修正貸借対照表および税額計算書は別紙(一)、(四)のとおり)

第二  昭和四八年分の実際総所得金額が二、四三一万二、三九七円あつたのにかかわらず、昭和四九年三月一二日、前記本所税務署において、同税務署長に対し、総所得金額が三七二万六、三九四円でこれに対する所得税額が四八万二、〇〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により昭和四八年分の正規の所得税額一、〇六五万九、八〇〇円と右申告税額との差額一、〇一七万七、八〇〇円を免れ

(修正貸借対照表および税額計算書は別紙(二)、(五)のとおり)

第三  昭和四九年分の実際総所得金額が三、一七〇万七、七三三円あつたのにかかわらず、昭和五〇年三月六日、前記本所税務署において、同税務署長に対し、総所得金額が三七七万六、〇一六円でこれに対する所得税額が三八万二、二〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により昭和四九年分の正規の所得税額一、三四二万七、四〇〇円と右申告税額との差額一、三〇四万五、二〇〇円を免れ(修正貸借対照表および税額計算書は別紙(三)、(六)のとおり)

たものである。

(証拠の標目)

判示全般の事実につき

一、被告人の当公判廷における供述

一、被告人の収税官史に対する昭和五〇年九月一八日付、同月二二日付、一一月七日付、同月一七日付、一二月三日付各質問てん末書

一、被告人の検察官に対する供述調書

一、本所税務署長作成の証明書

一、押収してある確定申告書三袋(当庁昭和五一年押第一、一七一号の一ないし三)

各勘定科目につき

一、大蔵事務官作成の「預金残高および受取利息調査書」および花輪郡彦作成の「銀行預金残高について」と題する申述書(別紙(一)、(二)、(三)の各番号<2>普通預金、同各番号<3>定期預金、同各番号<4>定期預金、別紙(二)、(三)の各番号<5>通知預金、別紙(二)雑所得につき)

一、大蔵事務官作成の掛金調査書および花輪郡彦作成の「掛金について」と題する申述書

(別紙(一)の番号<5>掛金、別紙(二)、(三)の各番号<6>掛金につき)

一、大蔵事務官作成の有価証券取引調査書および花輪郡彦作成の「有価証券残高について」と題する書面

(別紙(一)の番号<6>有価証券、雑所得、別紙(二)、(三)の各番号<7>有価証券)

一、大蔵事務官作成の貸付金調査書

(別紙(一)の番号<7>貸付金、別紙(二)、(三)の各番号<8>貸付金につき)

一、大蔵事務官作成のたな卸商品調査書

(別紙(一)の番号<8>たな卸資産、別紙(二)、(三)各番号<9>たな卸資産につき)

一、大蔵事務官作成の受取手形調査書

(別紙(一)の番号<9>受取手形、別紙(二)の番号<10>受取手形、別紙(三)の番号<11>受取手形)

一、大蔵事務官作成の売掛金残高調査書

(別紙(一)の番号<10>売掛金、別紙(二)の番号<11>売掛金、別紙(三)の番号<12>売掛金につき)

一、大蔵事務官作成の建物減価償却調査書

(別紙(一)の番号<11>建物、別紙(二)の番号<12>建物、別紙(三)の番号<13>建物につき)

一、大蔵事務官作成の事業主貸勘定調査書

(別紙(一)の番号<12>事業主貸、番号<15>事業主借、番号<17>預金利息〔分離〕、番号<18>少額配当金、別紙(二)の番号<13>事業主貸、番号<16>預金利息〔分離〕、番号<17>少額配当金、番号<18>有価証券取引益〔非課税〕、番号<19>ワリコー償還益〔非課税〕、別紙(三)の番号<14>事業主貸、番号<18>預金利息〔分離〕、番号<19>少額配当金、番号<20>有価証券取引益〔非課税〕につき)

一、大蔵事務官作成の買掛金残高調査書

(別紙(一)の番号<13>買掛金、別紙(二)の番号<14>買掛金、別紙(三)の番号<15>買掛金につき)

一、大蔵事務官作成の未払金調査書

(別紙(一)の番号<14>未払金)

一、大蔵事務官作成の配当金調査書

(別紙(一)の番号<19>源泉所得税〔納付済〕、配当所得、別紙(二)の番号<20>源泉所得税〔納付済〕、配当所得、別紙(三)の番号<21>源泉所得税〔納付済〕、配当所得につき)

一、大蔵事務官作成の前渡金調査書

(別紙(三)の番号<10>前渡金につき)

一、小川武志作成の「取引内容照会に対する回答」と題する書面

(別紙(三)の番号<16>未払金につき)

(法令の適用)

一、該当罰条と刑種の選択

判示第一ないし第三の事実 …… 所得税法二三八条(懲役刑、罰金刑併科)

一、併合罪加重 …… 刑法四五条前段

懲役刑につき …… 刑法四七条本文、一〇条(犯情の重い判示第一の罪の刑に加重)

罰金刑につき …… 刑法四八条二項

一、換刑処分 …… 罰金刑につき刑法一八条

一、執行猶予 …… 懲役刑につき刑法二五条一項

(情状について)

被告人は玩具卸売業のうち、特に流行遅れとなつた等の理由で在庫品となつた商品を安く買つて転売するいわゆるバツタ屋と称する営業を営むもので、見込違い等もあり常に経営が安定せず、これまで二回の倒産経験もあるため、使用人を一切おかず、妻と二人のみで経費を極端に切りつめることによつて収益をあげ、裏預金をして金融機関の信用を得るとともに、老後に備えたいと考えて脱税を企図し、帳簿類を記帳せず適当に申告し、あるいは簿外預金を設定するなどの方法により本件脱税に及んだものである。

そのほ脱金額は三ケ年合計で約三、六〇〇万円余に及びその情は必ずしも軽いとは言えないが、他方本件摘発後、深く反省し修正申告によりほ脱金額を納税し(加算税についても分納中)、事業形態を会社組織として税理士に経理を依頼して改善を計つていること、ほ脱方法も特に悪質とは言えず、被告人の従前の生活は質素と勤勉を旨として特にほ脱金額を遊興に費消したといつた事情も認められないことなど諸般の有利な情状をも考慮して主文のとおり量刑する。

よつて主文のとおり判決する。

(裁判官 安原浩)

別紙(一) 修正貸借対照表

青柳良太郎

昭和47年12月31日

<省略>

<省略>

別紙(二)

修正貸借対照表

昭和48年12月31日

<省略>

<省略>

別紙(三)

修正貸借対照表

青柳良太郎

昭和49年12月31日

<省略>

<省略>

別紙(四) 税額計算書

昭和47年度

<省略>

別紙(五) 税額計算書

昭和48年度

<省略>

別紙(六) 税額計算書

昭和49年度

<省略>

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